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「大都会 闘いの日々」
レギュラー出演
渡哲也・石原裕次郎・仁科明子
高品格・宍戸錠・寺尾聰・平泉征・神田正輝
佐藤慶・玉川伊佐男・中条静雄
篠ひろ子・牧村三枝子
制作-石原裕次郎/企画-岡田晋吉・小林正彦
プロデューサー-山口剛・石野憲助・森川一雄
音楽-伊部晴美・ゼロ座標
『大都会 闘いの日々』は、1976年(昭和51年)1月6日から8月3日まで日本テレビ系列で毎週火曜日21:00 - 21:54に全31話が放送された、
石原プロモーション制作の刑事ドラマである。
『大都会』シリーズの第1作。「石原プロTV第一回作品」と銘打って製作された。
病床からのカムバックを果たした渡哲也の復帰第1作として制作され、
テレビへ移行した石原プロモーション作品のノウハウが固められた作品でもある。
原案とメインライターを倉本聰が手掛け、マル暴担当刑事の黒岩(渡哲也)と事件記者クラブのキャップである滝川(石原裕次郎)を中心に、
彼らの姿を通して暴力団事件の陰に潜む非業に満ちたドラマを描写する。主人公は黒岩だが、滝川は黒岩を見守る大きな存在であることが特徴である。
本作スタート前に倉本は企画意図として「くどくど理屈は並べ立てず、媚びることなく、視聴者には本格的なサスペンスの醍醐味に合わせて
少しの人生のペーソス(哀感など)を見せ、無条件で愉しんでもらえて圧倒的支持を得られる物を。」とその旨を書いている。
日本の刑事ドラマにおいて、暴力団事件がクローズアップされることは非常に稀であり、暴力犯捜査の専務課である捜査第4課が刑事ドラマの舞台となるケースも大変珍しい。
もう一つの舞台とも言うべき城西警察署記者クラブに常駐する新聞記者達の活躍や、シリーズを通して描かれるサイドストーリーも見所のひとつ。
また、当時の刑事ドラマにありがちだったアクション要素をあえて排除し、警察の組織体制や捜査手法、暴力団事件の手口なども非常にリアルに描いている。
従来の刑事ドラマの基本スタイルである、刑事が犯人を追いつめて事件解決という流れに至る話は本作では数えるほどしかなく、
エピソードの大半は捜査の過程や結果が不透明のまま話が終わるというケースがほとんどであった。
その作風も、脚本家によってかなりのバラつきがあり、各エピソードもスローテンポな演出で描かれることが多かった。
中盤になると、黒岩や滝川の出番を減らし、ゲストキャラを主軸にした作品(「山谷ブルース」、「急行十和田2号」など)も登場。
終盤は籠城や暴力団全国統一計画などスケールの大きな事件を扱うようになり、ハイテンポな演出に乗せたハードで重厚な作風の社会派刑事ドラマへとシフトチェンジしていった。
作品面では高く評価され、放送期間も当初予定から1ヶ月延長されたものの、視聴率は伸び悩んだことから、
翌年の次作『…PARTII』ではアクションを前面に押し出した作風へと移行していく。
★「大都会」の頃★
1972年7月から放送された「太陽にほえろ」で銀幕のスター、石原裕次郎はテレビドラマの初レギュラーを踏んだ。
当初、石原はテレビ出演には懐疑的で最初の撮影では、16ミリフィルムのカメラを見て、
「そんな小さいカメラで俺が撮れるのか」と馬鹿にするように言い放ったという。
その後「太陽にほえろ」は人気番組となり、当初1クールの出演だった石原は続投することとなる。
この「大都会」は、そんな石原裕次郎が自身のプロダクションとして初めて自社企画・制作でのテレビドラマとして製作した作品だった。
脚本の倉本聰は、2年前にNHK大河ドラマ「勝海舟」を担当、
翌年には「前略おふくろ様」でヒットを飛ばしていた。
この「大都会」で石原裕次郎・渡哲也と組んだあと、翌77年には「あにき」で高倉健、
その翌年78年には「浮浪雲」で再び渡と組んでいる。
話数 | サブタイトル | 脚本 | 監督 | 撮影 | ゲスト | 星取表 |
1 | 妹 | 倉本聰 | 小澤啓一 | 有吉英敏 | 水沢アキ 石橋蓮司 |
★★★★★ |
寸評 | 第一作にして傑作。渡と仁科の兄妹関係を石橋・水沢にダブらせて描く構成が巧み。丁寧に撮影された画面からは石原プロスタッフの意気込みが伝わってくる。渡のセリフが皆無なのも素晴らしい。逆にこれがデビュー作である神田の拙さが目立つ。 | |||||
2 | 直子 | 倉本聰 | 小澤啓一 | 有吉英敏 | 篠ひろ子 伊吹吾郎 |
★★★★ |
寸評 | ヤクザに騙されブルーフィルムを撮影される篠ひろ子が主人公。渡は妹と同じ境遇の篠に惹かれて行く。篠は渡を刑事と知っていながら最後まで騙され続ける。 | |||||
3 | 身がわり | 斎藤憐 | 降旗康男 | 金宇満司 | 渡辺篤 三木聖子 |
★★★★ |
寸評 | 組織に売られたヤクザが出所して組長の娘を誘拐する。同じように組織の一員で、上の命令には逆らえない刑事と記者たちとの対比。ラストの篠ひろ子の表情に思わず救われる。 | |||||
4 | 協力者 | 倉本聰 | 村川透 | 高村倉太郎 | 松田優作 小鹿番 |
★★★ |
寸評 | 松田優作がゲスト。何故優作が犯人を突き止めるのかが不可解。サングラスを外さず、ラストにその理由が判明するがそれも不可解。全編通して独りよがりの芝居となっている。 | |||||
5 | めぐり逢い | 斎藤憐 | 降旗康男 | 金宇満司 | 宮下順子 蟹江敬三 |
★★★★ |
寸評 | 宮下順子がゲスト。彼女の宛書きの脚本だろう。田舎から出てきた、騙され続ける宮下が好演。渡もまた騙されてやる。ラストのインスタント写真は良かったが、もう一捻りあれば良かった。 | |||||
6 | ちんぴら | 永原秀一 | 村川透 | 高村倉太郎 | 林ゆたか 浅田美代子 |
★★★★ |
寸評 | 小心者のチンピラと田舎での恋人のお話。林も浅田も好演。浅田の青森で待っている、にジーンときた。ラスト渡の温情セリフ「拳銃は拾ったんだよな」には今の時代では成立しないだろう。 | |||||
7 | おんなの殺意 | 大津皓一 塩田千種 |
小澤啓一 | 萩原泉 | 赤座美代子 岡崎二朗 |
★★★ |
寸評 | 刑務所の出所とともに知り合った男・岡崎に強姦される赤座。その後も赤座につきまとう岡崎。亭主不在の空虚さから男を一瞬受け入れてしまう悲しさ。当時32歳の赤座の色っぽい演技が良い。 | |||||
8 | 俺の愛したちあき・なおみ | 倉本聰 | 村川透 | 前田米造 | 高橋洋子 蜷川幸雄 |
★★★★★ |
寸評 | 北海道・美瑛から出てきた歌手志望の高橋が、生放送の番組で自身の殺人を告白しようとする。寸前で音声は絞られちあきなおみの「喝采」が代わりに流れ出し終となる。民放テレビで「枕営業」をテーマにしたドラマが未だ放送可能だった気骨ある回。日本のテレビドラマ史上に残る傑作だろう。 | |||||
9 | 解散 | 永原秀一 | 小澤啓一 | 萩原泉 | 青木義朗 神田隆 |
★★★★ |
寸評 | 元刑事だった暴力団幹部を演ずる青木義朗が良い。この回は石原が主役となっている。ラストへの運びをもう少し丁寧に描いて欲しかったが佳作の一遍。 | |||||
10 | 憎しみの夜に | 野上龍雄 | 村川透 | 前田米造 | 内田あかり 芹明香 |
★★ |
寸評 | 東映の野上龍雄脚本ということで期待したが今ひとつ。内田あかりの約が中途半端。犯人役の芹明香も設定が浅く、口笛吹きも耳障り。 | |||||
11 | 大安 | 倉本聰 | 降旗康男 | 金宇満司 | 内田朝雄 清水健太郎 |
★★ |
寸評 | 倉本聰脚本にしてはテーマが絞られていない。ヤクザの組長・内田と渡が一緒に飲むのはおかしい。また清水が鉄砲玉になるのも突然すぎる。 | |||||
12 | 女ごころ | 大津皓一 | 降旗康男 | 金宇満司 | 中尾ミエ 森次晃嗣 |
★★ |
寸評 | 中尾ミエがヤクザな夫・森次晃嗣を見限って売る。しかし途中から次々と変心いく女ごころがテーマだが、 どうにも説得力がない。 | |||||
13 | 再会 | 永原秀一 | 澤田幸弘 | 萩原泉 | 藤岡琢也 石橋蓮司 |
★★★ |
寸評 | 殺し屋の石橋蓮司を追って、大阪府警から藤岡琢也が出張して来る。藤岡と石橋の関係が単なる犯人と刑事の関係でしかなく、深みはない。 | |||||
14 | もう一人の女 | 永原秀一 大津皓一 |
澤田幸弘 | 萩原泉 | 真屋順子 黒部進 |
★★ |
寸評 | 麻薬製造中に爆発して死亡する男二人の、女房と妹が主人公。ただの一被害者の視点の範囲に留まったままでてーまが浮かび上がってこない。 | |||||
15 | 前科者 | 倉本聰 | 村川透 | 山崎善弘 | 室田日出男 春川ますみ |
★★★ |
寸評 | 題名は「前科者」だが、お話は天然痘に罹患した前科者が拳銃横流しに加担しているかどうかがポイントになっている。日陰者としての描写が室田にも妻役の春川にも一切ないのでなかなか共感ができない。 | |||||
16 | 私生活 | 斎藤憐 | 村川透 | 山崎善弘 | いしだあゆみ | ★★★★ |
寸評 | いしだあゆみがゲスト。流石に存在感がある。私人のプライバシーを利用して犯人逮捕に結びつける警察の手法を批判的に描く。ラストの一言が良い。 | |||||
17 | 約束 | 斎藤憐 | 小澤啓一 | 金宇満司 | 高橋悦史 栗田ひろみ 佐藤蛾次郎 |
★★ |
寸評 | 高橋悦史が軽佻浮薄な三下ヤクザを演じているがミスキャストだろう。コメディーとして見て良いのかどうか戸惑うばかり。 | |||||
18 | 少年 | 倉本聰 | 村川透 | 前田米造 | 小林勝彦 富田浩太郎 |
★★★★ |
寸評 | 不正入試を知ってしまった少年が主人公。詩の朗読と走るカットが少しくどいが、面白い。 | |||||
19 | 受難 | 永原秀一 | 小澤啓一 | 金宇満司 | 丘みつ子 菅貫太郎 |
★★★ |
寸評 | 銀行支店長の秘書、丘みつ子が警察に告発する。銀行を脅す総会屋の悪行に犠牲となる中小企業の悲哀を描く。 | |||||
20 | 週末 | 倉本聰 | 村川透 | 前田米造 | 伴淳三郎 橋爪功 |
★★ |
寸評 | 篠ひろ子のブルーフィルム押収のために熱海に出張する渡と高品。旅館業界の闇をテーマにしてはいるが面白くはない。ゲストの伴淳三郎に見所はなし。橋爪功もいい味出しているが逃げ延びてしまうのかおかしい。ラストもまったく響かない。 | |||||
21 | スクープ | 永原秀一 峯尾基三 |
山本迪夫 | 金宇満司 | 睦五郎 | ★★★ |
寸評 | 石原の属する記者達が、足を洗おうとして組に撃たれたヤクザを匿ってスクープ記事を発表。しかし結局は狙撃されて命を落とす。渡の出番が少ない。 | |||||
22 | スター | 柏原寛司 | 山本迪夫 | 金宇満司 | 高橋長英 佐野厚子 |
★★★ |
寸評 | 人気女子DJとヤクザな兄の物語。兄を庇う妹のよくあるパターン。前回に続いて渡哲也は多忙なのか出番が少なく、前回に続いて裕次郎中心に話が進む。 |
23 | 山谷ブルース | 倉本聰 | 澤田幸弘 | 前田米造 | 志賀勝 杉本美樹 |
★★★★ |
寸評 | 志賀勝を念頭に書かれた脚本だろう。「山谷ブルース」とは直接関係ないのが残念ではあるが、志賀勝の熱演でラストまで緊張感ある力作。ラストの渡も良い。 | |||||
24 | 急行十和田2号 | 金子成人 | 澤田幸弘 | 前田米造 | 川谷拓三 坂口良子 |
★★★ |
寸評 | スケコマシ役で川谷拓三がゲスト。純朴な坂口良子を寸前で逃走させる時の感情が、段階的に描かれていないので説得力がないのが残念。二人は好演している。その他、郷鍈治も出演している。これは第8話「俺の愛したちあきなおみ」への返礼の意味もあったようだ。 | |||||
25 | アヴァンチュール | 斎藤憐 | 小澤啓一 | 萩原憲治 | 木の実ナナ 岩崎加根子 |
★★★ |
寸評 | 裕次郎中心に話が進む。妻の岩崎加根子他の家族が登場するが、所帯じみてしまい今一つ。拳銃突きつけられた寸前に渡が踏み込むのは出来すぎ。 | |||||
26 | 顔 | 永原秀一 峯尾基三 |
小澤啓一 | 金宇満司 | 内藤杏子 八名信夫 |
★★★★ |
寸評 | 複数の顔を持つ女の素顔が暴かれていく構成が面白い。「都会に暮らすといつでも泣けるし、いつでも笑えるようになるの」のセリフが心に響く。 | |||||
27 | 雨だれ | 倉本聰 | 舛田利雄 | 萩原泉 | 柴田侊彦 稲野和子 |
★★★ |
寸評 | 舛田利雄監督作。団地籠城する筋運び。道路封鎖して団地を取り囲む警察との攻防がダイナミックに描かれていく。ただ後半は失速して尻切れトンボ。渡と仁科の関係を対比させるのには無理があった。 | |||||
28 | 不法侵入 | 斎藤憐 | 舛田利雄 | 萩原泉 | 大門正明 下條正巳 |
★★★ |
寸評 | ヤクザの殺しの身代わり出頭の話。高品と大門との関係を中心に描かれるが、渡と伊佐山ひろ子との関係が当時進行するのが分かりづらく、リンクしていない。 |
29 | 恵子 | 倉本聰 | 村川透 | 金宇満司 | 滝田裕介 蜷川幸雄 |
★★★ |
寸評 | 神田が仁科に結婚の許しを請う為に渡に会おうとする。その際に仁科の強姦の過去を知る事となる。人気女優の密会との事件と当時並行して描かれるがどちらも中途半端に終わってしまった感がある。 | |||||
30 | 縁談 | 倉本聰 | 村川透 | 金宇満司 | 山内明 田島義文 |
★★★ |
寸評 | 渡に課で働く女性の縁談が持ち込まれる。渡は酔っ払って篠ひろ子にプロポーズ。その後、篠が自分が映るブルーフィルムを取り返すために山内明と寝た事実を渡は知ることとなる。最終回に向けての前編の構成のよう。 | |||||
31 | 別れ | 倉本聰 | 村川透 | 金宇満司 | 橋本功 今井健二 |
★★★ |
寸評 | 前回からの続き。篠ひろ子は自分が山内と寝ていた事を渡に知られたと悟る。山内は篠から警察に情報が漏れていた事を知りながら責めることもなく香港へ旅立つ。それに同行する篠。ラストは渡と仁科の散歩で終わる。本来なら、篠は殺され、それを犠牲にして渡が山内を逮捕するのが王道の構成のはず。次のシリーズで篠を再登場させるために温存したのかと思ったが・・・。死なせるべきだったと思う。 |